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新生児期の母子分離ストレスが脳の海馬発達に与える影響をマウスモデルを用いて解明 : 片平立矢 氏(元脳科学研究科 助教)、宮崎直子さん(心理学部3年生・脳科学研究科リサーチ・インターン)、元山純 教授(神経発生分子機能部門)の論文がDevelopment, Growth & Differentiationに掲載

'18年6月15日 更新
虐待、無視といった親から受ける養育の欠如はヒトのみならず他の哺乳類においても脳の発達に障害をもたらすことが知られています。動物実験では母子分離と呼ばれる一定期間新生児を親から分離することでストレスを与える実験が用いられ、母子分離が出生後の脳、特に海馬の発達に重大な障害を与えることが報告されてきました。しかしストレスによって最初に海馬のどの細胞群がどのような障害を受けるのかについては不明でした。
片平立矢 氏(元脳科学研究科 助教)、宮崎直子さん(心理学部3年生・脳科学研究科リサーチ・インターン)、元山純 教授(神経発生分子機能部門)らは、生後4日目の新生児に24時間の母子分離を行なった場合の海馬での抑制性神経細胞の発生に着目し、抑制性神経細胞への分化前から細胞分化の進み具合を観察することで、母子分離の与える影響を観察しました。その結果、長期的な影響を見ると母子分離によって海馬の大きさが縮小すると共に、抑制神経細胞の数が海馬の左側のみで減少することを見出しました。さらに母子分離を受けた直後の海馬内の抑制性神経細胞の分化の進み具合を解析すると、「GAD67」という抑制性神経伝達物質であるGABAを合成するタンパク質の発現が抑制性神経前駆細胞で進行しないことが明らかになりました。このGAD67がないと前駆細胞は成熟した抑制性神経細胞としては機能できないため、その影響が海馬内での抑制神経細胞の数の減少を引き起こすと考えられます。
 本研究により、母子分離によるGAD67の発現抑制が、抑制性神経細胞の分化阻害に関わることが初めて明らかとなりました。抑制神経細胞は新生児の脳では感覚知覚の臨界期の成立に必須であることが報告されており、また母子分離に代表される新生児への虐待が統合失調症、不安症、共感覚の原因となることも知られています。本研究成果はそれらの脳機能障害の発症過程の解明や治療法探索に役立つと期待されます。また親子関係の脳発達における重要性を強調する上で意味があります。本研究成果は、2018年6月4日に発生学専門誌「Development, Growth & Differentiation」に掲載されました。

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