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トピックス

脳科学研究科神経膜分子機能部門修了生・吉田知史さんらによる論文がCell Reports誌に掲載されました

2025年5月9日 更新

シナプス前終末のホスファチジルイノシトール代謝に関する新説を提唱


ホスファチジルイノシトールは、シグナリング脂質として知られ、中でも頭部のイノシトール環の4位と5位にリン酸基が付加されたPI(4,5)P2は、細胞のエンドサイトーシスを誘導する脂質であり、シナプス前終末におけるシナプス小胞のエンドサイトーシスにおいても重要なシグナルとして働きます。一方、PI(4,5)P2の前駆体であるPI(4)Pの働きについては、何もわかっていませんでした。
 今回、神経膜分子機能部門を中心とした研究チームは、PI(4)Pの合成酵素に対するさまざまな阻害薬を用いた実験から、(1)PI(4)Pの前駆体であるPIに富んだシナプス小胞膜が形質膜に融合すると、そこでPI4KIIIαという酵素でPI(4)Pが合成されること、(2) 神経活動が盛んになるとシナプス前終末でPI(4)P量が顕著に増加すること、(3) シナプス前終末のPI(4)P量が減少すると、シナプス小胞のエキソサイトーシスやエンドサイトーシスが鈍化すること、(4) PI(4)Pが減少するとCa2+チャネルの活性が減弱し、シナプス伝達の鈍化に関わっていること、などを明らかにしました。
 従来は、シナプス小胞膜上でPI4KIIαというリン酸化酵素のはたらきでPI(4)Pが作られ、シナプス小胞が融合すると、形質膜上におけるPI(4,5)P2合成の前駆体としてはたらくと考えられて来ましたが、今回の我々の研究成果は、シナプス前終末におけるホスファチジルイノシトール代謝の新説を提唱するものです(下図参照)。また、今回の発見によりPI4KIIIαのシナプス伝達における重要性も明らかにしました。このリン酸化酵素の遺伝子変異は、統合失調症などの精神疾患につながるという報告もあります。したがって、今回の発見を契機として、PI4KIIIαの役割や制御機構をさらに明らかにできれば、将来的に精神疾患の病態形成機序の理解や治療戦略の構築に役立つことが期待されます。


 
本論文は、脳科学研究科修了生・吉田知史さん(神経膜分子機能部門・高森茂雄教授)が中心になって行い、河野洋幸先生(同部門)、近江純平先生・青木淳賢先生(東大・薬)、堀哲也先生(沖縄科学技術大学院大学・シナプス生物学ユニット)、小林裕さん・齋藤直人先生(同大・生命医科学研究科)との共同研究で得た研究成果です。

【論文情報】
論文タイトル:Synaptic vesicle fusion promotes phosphatidylinositol 4-phosphate synthesis for efficient synaptic transmission.

著者:Tomofumi Yoshida, Hiroyuki Kawano#, Jumpei Omi#, Tetsuya Hori#, Yutaka Kobayashi, Naoto Saitoh, Junken Aoki & Shigeo Takamori*. 
#Equally contribution, *Corresponding author

リンク:https://doi.org/10.1016/j.celrep.2025.115634

主な研究費:科学研究費・基盤B、JSPS研究拠点形成事業Core-to-Core Program、武田財団研究助成金、内藤財団研究助成金(高森)、JSPS特別研究員奨励費(吉田)

お問い合わせ

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TEL:0774-65-6053
FAX:0774-65-6099
E-mail:jt-nkgjm@mail.doshisha.ac.jp

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