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教員からのメッセージ ~ 髙森 茂雄 教授

生体分子の定量的な理解に挑戦する

髙森茂雄 教授

 分子生物学というのは、せいぜいここ50〜60年の新しい学問なんですよ。物理や化学と比べると理論が体系立っておらず、観察したデータから意味を見出すという段階です。定量的な理解を進めることで、より学問として成熟させていきたいですね。タンパク質分子ひとつをとっても、その動作原理は非常に複雑で、pHや膜周囲の電荷などがどのように効いているのかを明らかにするのは簡単ではありません。タンパク質複合体ともなると、ハードルが格段に上がります。生命ってやっぱり難しいんだな、と思いますね。だからこそやりがいがあるし、チャレンジングな分野なんです。

 この研究科では、脳というターゲットに対して発生学や形態学、生理学など様々な視点でのプロジェクトが動いています。その中でも、分子生物学、細胞生物学の研究手法を提供しつつ、定量性を持つ新しい解析技術を作り続けるのが私の役割ですね。

シナプスを徹底追求しよう

 具体的にターゲットとしているのは、シナプスでの伝達物質の放出と再充填のメカニズムです。学生時代、細胞からホルモン等が分泌されるしくみに興味を持ち、それから細胞内小器官の膜の挙動を突き詰めて理解したいというモチベーシヨンで研究を続けています。

 2000年には、前シナプスニューロンの細胞質からシナプス小胞内へのグルタミン酸輸送に働くトランスポーターVGLUTを同定しました。多くの研究では、こうした生命現象に働くタンパク質をひとつひとつ同定することをもって「メカニズムの追求」といっていますよね。私の場合はそれだけでは満足できません。やっぱり生命は、生きている状態で「動き」を理解しないといけないと思うんですよね。シナプス小胞の内外がどういう状態になったときにトランスポーターが駆動するのか、その動作原理まで知りたくなるんです。

新しい観測技術を作り、パラダイムシフトを目指す

 分子生物学、細胞生物学を進歩させてきたのは、哲学よりもテクニックであるとよくいわれます。パラダイムシフトを起こしてきたのは、新しい考え方ではなく、測定や観測の技術の進歩なのです。例えば2008年にノーベル化学賞を受賞した下村脩博士がGFPを発見したことで、細胞内のタンパク質やオルガネラの挙動を直接観測できるようになりました。私は、新しいプローブの開発などを通して、それまで観測できなかった細胞の中の現象を、生きた状態で定量的に観測することを目指しています。

 生命現象をこれまでよりも深く理解するためには、既存の手法では限界があるのです。私自身がこういう考え方ですから、漠然とでも「これを知りたい」という思いを持つ学生に来てほしいですね。その疑問の答えを見つけ出すために何を調べればいいのか、必要な実験手法は何かといった、研究を進めるための戦略を共に考えていくことで、学生の研究者としての力を育んであげたいと思っています。

 この研究科は、部門の垣根を越えて、教員がみんなで学生を育てる気風があります。優秀な基礎研究者とディスカッションしながら研究を進める中で、流行に流されずにじっくりとサイエンスを追求できるはずです。

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