教員からのメッセージ ~ 元山 純 教授
研究テーマを立ち上げるトレーニング
私の興味は、もともと「卵が成長して親ができる」ことを不思議に感じたことから始まりました。そこから現在は神経幹細胞の発生過程の制御メカニズムや、発生から死に至るまでの期間で共通して使われる分子メカニズムについて研究を進めています。具体例を挙げると、体の左右や体節形成に関わるソニックヘッジホッグという分泌タンパク質は脳の発生に必須でありながら、その後の機能維持にも重要であることがわかってきました。その機能と役割を調べることで、脳の組織構築と維持のしくみを解き明かすことを目指しています。
ただ、研究室に来る学生には、私の研究テーマを手伝わせる気はありません。自分自身で興味をもった現象を、いかに研究テーマとして成り立たせるか、そのチャレンジをしてほしいと思っています。そして最初のテーマでは、どんなデータを出していくか口ードマップを描いて、期日までに論文を仕上げることを重視しています。テーマの立ち上げから発表までの一連の流れをできるだけ早く回すことで、研究の進め方を身につけてもらいたいのです。
研究を擬似体験できる7週間
さあ研究テーマを考えよう、といきなり学生に言っても、すぐにできる人は少ないと思います。ポイントは、サンプルを見たり論文を読んだりしたときに、何か疑問を持てるかということです。子どもの頃はなんでも疑問だらけだったんですけど、大人になると、それが失われることが多いようです。人によっては、周囲に対して素朴な疑問を感じる力を取り戻すためには、トレーニングが必要かもしれません。私のおすすめは、日常の中で無理矢理にでも疑問を作ることです。子どもが考えるような、他愛のないものでもいいんです。なぜ?本当にそうなの?と無理矢理考えることを続けていると、懐疑的思考のクセがついてきます。
脳科学研究科では、1年目の最初に7週間×2回のラボローテーション(授業科目名は脳科学実験1・2)をするのですが、私のところに来た学生には「サンプルをよく観察する」ということを徹底させます。研究テーマの種を見つけるためには、やはり現象に触れて疑問を見つけたり、感動を得ることが大切です。
自らの興味を研究にしよう
私がこの研究科に来る前に所属していた本学の生命医科学部で受け持った4年生にも、卒業研究のテーマを自分で考えてもらっていました。ひとりは、自らが小児喘息で、天候によって症状がひどくなるという実体験があったものの、その因果を示す論文がないということに気づき、エアロゾル密度と気管の炎症との関連を研究テーマとしました。別の学生は、家族が、がんにかかったことから転移に焦点を絞り、がん細胞とがん間質細胞との相互作用を研究しました。2人とも今は製薬企業や大学の博士課程で研究を行っています。
将来、研究者として生きていきたいなら、アイデアをひねり出す、自分の時間を管理する、ストーリーの筋道を立てるといったことが必要になります。その力を身につけるためにも、まずは自分が興味を持てることをテーマとして、一歩踏み出してみることが大切です。脳科学研究科は教員だけでなく、学生も多様なバックグラウンドと考えを持った人が集まっています。脳に限らず、研究者を目指す最初の5年間を過ごすのに最適な場所だと思います。
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