このページの本文へ移動
ページの先頭です
以下、ナビゲーションになります
以下、本文になります

脳科学研究科シナプス分子機能部門の大学院生・平井向日葵さん、橋本谷祐輝准教授らの論文がCell Reportsに掲載されました。

'23年1月6日 更新
脳科学研究科シナプス分子機能部門の大学院生・平井向日葵さん、橋本谷祐輝准教授らの論文がCell Reportsに掲載されました。

記憶や学習に重要な脳領域として知られる海馬は皮質下から様々な入力を受け、その活動が調節されています。皮質下からの投射のなかでも視床下部に位置する乳頭体上核は歯状回の主要出力細胞である顆粒細胞とシナプスを形成し、グルタミン酸とGABAを共放出することが知られています。最近の研究から、この乳頭体上核と歯状回間の神経回路が記憶、睡眠・覚醒、移動、神経新生などに重要な役割を果たすことがわかってきました。しかし、シナプスレベルでどのようなシナプス伝達調節や可塑性が発揮されるのかよくわかっていませんでした。

本研究では光遺伝学と電気生理学的手法を用い、マウスの乳頭体上核-顆粒細胞間回路でのシナプス可塑性を調べました。その結果、乳頭体上核からの入力と顆粒細胞の同期した神経活動によって、乳頭体上核-顆粒細胞シナプスでシナプス伝達効率が長期に渡って増強する長期増強が引き起こされることを見出しました。この長期増強はグルタミン酸によるシナプス伝達でのみ起こり、共放出されるGABAによる伝達では起こらないことがわかりました。さらに長期増強の誘導にはNMDA受容体の活性化が必須であり、典型的なヘブ則に従うシナプス可塑性であることを明らかにしました。本研究により、乳頭体上核は長期増強を発現することによって海馬神経活動をダイナミックに調節することが示唆されました。

論文情報:Subcortical glutamatergic inputs exhibit a Hebbian form of long-term potentiation in the dentate gyrus
Himawari Hirai, Takeshi Sakaba, Yuki Hashimotodani
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(22)01767-3


論文に関する図
脳科学研究科シナプス分子機能部門の大学院生・平井向日葵さん、橋本谷祐輝准教授らの論文がCell Reportsに掲載されました。

記憶や学習に重要な脳領域として知られる海馬は皮質下から様々な入力を受け、その活動が調節されています。皮質下からの投射のなかでも視床下部に位置する乳頭体上核は歯状回の主要出力細胞である顆粒細胞とシナプスを形成し、グルタミン酸とGABAを共放出することが知られています。最近の研究から、この乳頭体上核と歯状回間の神経回路が記憶、睡眠・覚醒、移動、神経新生などに重要な役割を果たすことがわかってきました。しかし、シナプスレベルでどのようなシナプス伝達調節や可塑性が発揮されるのかよくわかっていませんでした。

本研究では光遺伝学と電気生理学的手法を用い、マウスの乳頭体上核-顆粒細胞間回路でのシナプス可塑性を調べました。その結果、乳頭体上核からの入力と顆粒細胞の同期した神経活動によって、乳頭体上核-顆粒細胞シナプスでシナプス伝達効率が長期に渡って増強する長期増強が引き起こされることを見出しました。この長期増強はグルタミン酸によるシナプス伝達でのみ起こり、共放出されるGABAによる伝達では起こらないことがわかりました。さらに長期増強の誘導にはNMDA受容体の活性化が必須であり、典型的なヘブ則に従うシナプス可塑性であることを明らかにしました。本研究により、乳頭体上核は長期増強を発現することによって海馬神経活動をダイナミックに調節することが示唆されました。

論文情報:Subcortical glutamatergic inputs exhibit a Hebbian form of long-term potentiation in the dentate gyrus
Himawari Hirai, Takeshi Sakaba, Yuki Hashimotodani
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(22)01767-3