以下、本文になります
病態脳科学分野
チャネル病態生理部門 <Laboratory of Ion Channel Pathophysiology>
部門長:御園生 裕明 <Hiroaki Misono, Ph.D.>
脳の神経細胞は、細胞体から伸びる複数の樹状突起と、1本の軸索を持っています。樹状突起では、シナプスを介して他の細胞から情報が伝達され、電気信号が生成されます。電気信号は細胞体へと伝導し、統合され、軸索に到達します。ここで、神経細胞の出力である活動電位が生成されます。樹状突起と軸索にはそれぞれに特徴的なタンパク質が発現して構造を維持し、入出力部としての機能を付加しています。私たちの研究室では、樹状突起と軸索で電気信号の生成と調節をおこなうイオンチャネルと、構造の維持に関わる微小管結合タンパク質について研究を行っています。
イオンチャネルは電荷を持ったイオンを通過させる膜タンパク質で、膜電位を変化させることができます。シナプスで生じるシナプス電位も、活動電位も、イオンチャネルの働きによって生成されます。私たちは、イオンチャネルの働きを解明することは、脳における情報処理のしくみのよりよい理解につながると考え、研究を行っています。また、いくつかの神経疾患がイオンチャネル機能の障害を原因とすることが分かってきており、その病理メカニズムについての研究も行っています。
微小管は細胞骨格の一つであり、細長い樹状突起や軸索の構造を支えています。微小管結合タンパク質は微小管に結合して安定化させる役割を担っています。微小管結合タンパク質の一つであるタウは、軸索に特異的に局在し、長大な軸索の構造を支えています。一方、タウはアルツハイマー病の原因遺伝子の一つでもあり、異常な凝集体である神経原線維変化を形成し、神経変性を引き起こします。興味深いことに、正常な神経細胞では軸索に存在するタウが、アルツハイマー病の神経細胞では細胞体と樹状突起に蓄積し、神経原線維変化を形成します。私たちは、この局在の異常化こそがアルツハイマー病の重要な初期段階の一つであると考え、タウが軸索に局在化するメカニズムを明らかにし、それがアルツハイマー病でどのように破綻するのかを明らかにしようとしています。
研究テーマ
- 細胞内チャネル局在の分子機構(小胞輸送メカニズム、live-cell imaging)
- K+チャネルによる行動の制御(ノックアウト・マウスを使った行動実験)
- K+チャネルによる病理的過興奮の制御機構(パッチクランプ電気生理学)
- アルツハイマー病タウタンパク質の軸索局在化とその破綻のメカニズム
主要論文
- Iwata M., Watanabe S., Yamane A., Miyasaka T., and Misonou H. * (2019) Regulatory mechanisms for the axonal localization of tau protein in neurons. Molecular Biology of the Cell, in press.
- Kubo A., Ueda S., Yamane A., Wada-Kakuda S., Narita M., Matsuyama M., Nomori A., Takashima A., Kato T., Onodera O., Goto M., M., Tomiyama T., Mori H., Murayama S., Ihara Y., Misonou H. , and Miyasaka T.* (2019) Ectopic expression induces abnormal somatodendritic distribution of tau in the mouse brain. Journal of Neuroscience, in press.
- Hirono, M.*, Watanabe, S., Karube, F., Fujiyama, F., Kawahara, S., Nagao, S., Yanagawa, Y., and Misonou, H. (2018) Perineuronal nets in the deep cerebellar nuclei regulate GABAergic transmission and delay eyeblink conditioning. Journal of Neuroscience, in press.
- Jensen, C.S., Watanabe, S., Stas, J.I., Klaphaak, J., Yamane, A., Schmitt, N., Olesen, S.P.O., Trimmer, J.S., Rasmussen, H.B., and Misonou, H. * (2017) Trafficking of Kv2.1 Channels to the Axon Initial Segment by a Novel Non-Conventional Secretory Pathway. Journal of Neuroscience 37, 11523-11536.
- Hirono M., Ogawa Y., Misono K., Zollinger D.R., Trimmer J.S., Rasband M.N., and Misonou H. * (2015) BK channels localize to the paranodal junction and regulate action potentials in myelinated axons of cerebellar Purkinje cells. Journal of Neuroscience 35, 7082-7094.
メンバー
御園生 裕明(教授):Hiroaki Misono, Ph.D. (Principal investigator, Professor)
リンク
研究室の連絡先
お問い合わせ |
〒610-0394 京都府京田辺市多々羅都谷1-3 |
---|
各部門の研究内容・教員紹介 分子細胞脳科学分野 システム脳科学分野 病態脳科学分野 |